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被告準備書面(1)

被告渋谷区の準備書面1です。
(以下引用)

平成23年(ワ)第13165号損害賠償請求事件
原告●● 外3

被告 渋谷区

準備書面(1)

平成23年9月2日

東京地方裁判所民事第39部合議B係御中

被告指定代理人 山田幸男
同          小池浩三郎
同          渡邉哲夫
同          雨貝信生
同          藁谷 樹(代)
同          小林 稔(代)
同          原田 大(代)
同          木下 毅彦(代)
同          島田 直子(代)
同          森田 一央(代)

1宮下公園について
(1)宮下公園は、被告が設置し、管理する「都市公園」(都市公園法(昭和31年法律第79号)2条1項)であり、「都市公園の設置及び管理に関し必要な事項」(同法18条)につき、被告は、渋谷区立都市公園条例(平成8年渋谷区条例第17号。乙第10号証)をもって定めている。

(2)宮下公園の概要は、下記のとおりである(別紙参照)。



ア位置東京都渋谷区神宮前六丁目20番10号
イ面積10,808㎡
ウ地盤、形状等
(ア) 高さ約3mの人工地盤上にあり、人工地盤には約1.5mの盛土がなされ、ケヤキ、ネズミモチ等の高木が植栽されている。
(イ)南北に走るJR山手線の線路(西側)と明治通り(東京都道305号芝新宿王子線)(東側)に挟まれた、南北に細長い形状である。
(ウ)東西に走る区道(特別区道第914号路線)が公園中央部を貫通しており、同区道により公園は南北に分かれることとなるが、その南側部分と北側部分は同区道を跨ぐ空中歩廊で結ばれている(以下、南側部分及び北側部分をそれぞれ「公園南側部分」及び「公園北側部分」という。)。
(エ)公園の出入口は7か所設けられている。

2事実の経緯

(1) 被告は、平成8年3月、「渋谷区基本構想」(地方自治法2条4項参照)を制定し、基本構想実現のための行政計画として同年12月に策定した「渋谷区長期基本計画(平成8年度~平成17年度)」において、分野別計画として定めた「都市のオアシスとしての環境の整備」を推進するために、「自然環境と緑の保全・整備」を重点施策の一つに定め、「公園・緑地・広場の整備を図る」こととした(乙第11号証)。

長期基本計画の計画期間終了後、被告は、平成18年度から平成20年度までの3か年を計画期間とする「渋谷区実施計画2006」を策定し、同計画においても、継続して公園の整備を行っていくこととし(なお、被告は、その後の実施計画においても、公園の整備については、継続ないし拡充事業として位置付けている。)、また、宮下公園内にフットサルコートを設置することをも掲げ(乙第12号証)、平成18年6月、これを設置した。

(2)平成20年2月6日、被告はナイキジャパンから、宮下公園の整備について具体的な提案を受け、また、同月12日には、別の会社からも提案を受けた。これらの提案を受け、同月25日、被告は渋谷区立宮下公園施設ネーミングライツ選定委員会(以下「選定委員会」という。)を設置した(乙第6号証)。選定委員会は、同日及び同年3月7日の審査を経て、被告区長に審査結果を報告し(乙第8号証)、同日、被告区長は宮下公園施設のネーミングライツ事業者としてナイキジャパンを選定した。

(3)平成21年7月1日、被告職員らは、渋谷区立勤労福祉会館にて、地元住民らを対象に、宮下公園整備計画案の説明会を開催した(乙第13号証及び同14号証)。また、同月31日には、官下公園を起居の場とする者(以下「ホームレス」という。)らを対象に、現地において説明会を開催した。

(4)平成21年7月30日及び同年8月5日、被告は原告守る会から、同月29日ないし31日における宮下公園の占用許可申請を受け、同年7月30日及び同年8月5日、これらを許可した(乙第15号証の1ないし同17号証の2)。なお、上記占用許可期間中、夏まつりと称する集会・イベントが実施された。

(5)平成21年8月27日、被告はナイキジャパンとの間で、宮下公園施設のネーミングライツについて、下記のとおり、協定を締結した(乙第18号証)(以下、基本協定書自体を「本件基本協定書」といい、締結した基本協定を「本件基本協定」という。)。



ア目的(1条)
本件基本協定は、被告及びナイキジャパンの協力により、ネーミングライツ制度の導入を通じて、ナイキジャパンの地域貢献による公園施設の整備及び公園の維持管理の充実を推進し、区民サービスの向上を図ることを目的とする。

イ期間(2条)
協定期間は、平成22年4月1日から平成32年3月31日までとする。

ウ効力(3条)
本件基本協定は、協定期間の始期から効力が発生するものとする。

エネーミングライツの内容(4条、5条)
(ア)4条
被告は、ナイキジャパンに対して、次の権利を付与することを承認する。

①ネーミングライツ
協定期間中、ナイキジャパンが申し入れ、被告が承認した呼称を宮下公園の通称名とする権利をいう。

②通称名の表記
協定期間中、ナイキジャパンが使用する通称名の表記は、日本語、英語を含む複数言語で構成できるものとする。

③通称名の掲示
被告は、ナイキジャパンに対し、協定期間中、宮下公園に看板、サインで通称名を掲示することを許諾する。

(イ)5条
被告は、ナイキジャパンの提案に基づき、被告とナイキジャパンの協議により合意した宮下公園の整備計画において、ナイキジャパンの負担により、計画図のとおり、宮下公園の公園施設を改修及び新設することを承認する。なお、整備工事の期間及び工程等は、別途、被告とナイキジャパンの協議によりこれを決定するものとする。

オ ネーミングライツの対価(8条)
ナイキジャパンは、被告に対し、ネーミングライツの対価として、4月から翌年3月までの年度を単位とし、毎年度、金1,700万円(消費税相当額を含む。)を支払うものとする。ナイキジャパンは、被告に対し、ネーミングライツの対価として、宮下公園の整備計画により施工された公園施設を引き渡すものとする。

(6)平成22年4月からナイキジャパンが宮下公園の整備に着手することができるよう、被告職員らは、平成21年9月から、同公園内に不法に設置されたテント等の撤去に向け、約30名のホームレスに対し、退去ないしテント等撤去の説得及び特別相談会の開催(乙第19号証)等を行った。その結果、平成22年3月15日には、公園北側部分はホームレスがいなくなり、また、公園南側部分は数名のホームレスを残すのみとなった。

(7)平成22年3月16日、被告職員らは公園北側部分の閉鎖を試み、複数枚のフェンスの設置作業に取り掛かった。設置作業中、原告のじれんに属する者等が、大挙して、一旦設置したフェンスを力ずくで移動させたり、設置前のフェンスにしがみついたりするなどして、同作業の妨害をするとともに、被告職員らの耳元付近で拡声器を用いて罵声を浴びせるなどの行為にも及んだため、被告職員らは、同作業をこれ以上進めることができず、公園北側部分の閉鎖を断念した。また、被告職員らは、公園の出入口等に、同年10月まで公園の通り抜けができなくなる旨のお知らせのポスターを貼り出したところ(乙第20号証)、同職員らの目の前で、上記妨害行為等に及んだ者等により、同ポスターが剥された。

(8)平成22年4月13日、被告職員らは宮下公園の様子を見に現地に赴いたところ、同公園でたむろする4人~5人の者から、「何しに来た」等の罵声を浴びせられた。

(9)平成22年6月21日の夕方、宮下公園内に置かれた不法占用物件(都市公園法6条1項の占用許可を受けることなく宮下公園内に置かれた公園施設以外の工作物その他の物件又は施設をいう。以下同じ。)の一部から出火し、同一部が焼損した(乙第21号証)。

(10)平成22年6月25日、被告区長は、地元の町会及び商店会から、宮下公園の整備に関する要望を受けた(乙第22号証)。

(11)平成22年7月、被告区長は、宮下公園内の不法占用物件の除却に向け、行政代執行手続までをも視野に入れ、被告副区長を続括責任者としたプロジェクトチームを組織した(乙第23号証)。

(12)平成22年8月24日ないし26日、被告職員らは、宮下公園内の幾つかの不法占用物件上に、その撤去を促す旨の警告札を置き、さらに、同公園内の2か所に、不法占用物件の撤去を促す旨及び無許可で宮下公園を夏まつり等で利用できない旨示した警告札を掲示した(乙第24号証ないし同29号証)。

(13)平成22年8月28日ないし29日、宮下公園内において、同公園の占用許可を受けずして、夏まつりと称する集会・イベントが挙行された(乙第30号証)。

(14)平成22年8月31日、被告は、都市公園法6条1項の規定に違反する違法占用物の除却等を勧告する旨、住居困窮者に対する住居等の確保について相談に応じる旨及び行政手続法(平成5年法律第88号)31条及び15条3項の規定に基づく弁明の機会を付与する旨を公告した(乙第9号証)。

この公告と同時に、被告職員らは、官下公園内の2か所に、同年9月2日までに違法占用物の撤去を促す旨記載した警告札を掲示した(乙第31号証)。

(15)平成22年9月15日について
ア被告は、宮下公園に関する工事として、同日実施予定の仮囲い設置工事(下記イ)及び翌日から実施予定の樹木剪定(下記(16)ウ)のため、渋谷区立都市公園条例7条に基づき、同公園の一部区域の利用を禁止し、その旨告示した(渋谷区告示第109号(乙第32号証))。

イ被告職員らは、宮下公園に仮囲いを設置した。

ウ被告職員らは、宮下公園内に不法に置かれた各物件(明らかにごみと思われる物件を除く。)に物件番号を付した(後記乙第39号証の10枚目以下、甲第10号証参照)。なお、これらの物件については、その所有者からの申出があれば、同人への引渡しができるようにしており、現に平成22年9月15目ないし同月21日の間、幾つかの物件の引渡しがなされた(原告●●につき、乙第33号証ないし同37号証、乙第1号証)。

(16)平成22年9月16日について
ア被告は、渋谷区立都市公園条例7条に基づき、前日に告示した利用禁止区域を広げ、その旨告示した(渋谷区告示第110号(乙第38号証))。

イ被告は、都市公園法27条1項に基づき、上記告示(渋谷区告示第110号(乙第38号証))で示した利用禁止区域内にある所有者不明の物件につき、同月18日正午までに除却することを命じることをその内容とする同条3項の公告を行うとともに(渋谷区公告第161号(乙第39号証、甲第1号証))、原告のじれん及び原告守る会に対しても、それぞれが所有する物件につき、同日時までに除却するよう命じた(渋土公発第80号(乙第39号証、甲第2号証)、渋土公発第31号(乙第39号証、甲第3号証))(以下、これらの除却命令を総称して「本件除却命令」という。)。なお、被告職員らは、宮下公園の周囲数か所に、上記渋谷区公告第161号の公告文書の写し及び所有物の引取りを促す文書を掲示し、物件の搬出が困難な場合には被告職員が手伝う用意がある旨並びに土曜、日曜及び休日にも対応可能である旨等を明示し、所有者不明の物件の引取りについて、その促進ないし便宜を図った(乙第40号証)。

ウ被告は、宮下公園内のケヤキ、ネズミモチ等の樹木の剪定作業に着手した(なお、同作業は同年10月5日まで行われた。)。

(17)平成22年9月18日の正午を過ぎても、すべての物件が除却されなかったため、被告は、同日、行政代執行法(昭和23年法律第43号)3条1 項により、所有者不明の物件につき、同月21日正午までに必ず除却するよう戒告した公告を行うとともに(渋谷区公告第162号(乙第41号証、甲第6号証。なお、甲第6号証の物件目録は誤りであり、正しくは乙第41号証のとおりである。))、原告のじれん及び原告守る会に対しても、それぞれが所有する物件につき、同日時までに必ず除却するよう戒告した (渋土公発第34号(乙第41号証、甲第5号証)、渋土公発第35号(乙第41号証、甲第4号証))(以下、これらの戒告を総称して「本件戒告」という。)。

(18)平成22年9月20日、被告は、念のため、物件番号を付した物件(上記(15)ウ。所有者への引渡しのあった一部物件を除く。)につき、渋谷区公告第162号(乙第41号証)と同内容の公告を再度行うとともに(渋谷区公告第163号(乙第42号証))、原告のじれん及び原告守る会に対し、宮下公園内における違法占有物に係る確認の通知を行った(渋土公発第36号、渋土公発第37号(乙第42号証))。

(19)平成22年9月21日について
ア被告区長は、地元の町会及び商店会、商店街振興組合並びにまちづくり協議会等から、宮下公園の早期整備等に関する要望等を受けた(乙第43号証ないし同49号証)。

イ同日の正午を過ぎても、すべての物件が除却されなかったため、被告は、行政代執行法3条2項により、所有者不明の物件につき、代執行を行う時期を同月24日午前10時と指定した公告を行い(渋谷区公告第164号(乙第50号証、甲第9号証))、さらに原告のじれん及び原告守る会に対しても、それぞれが所有する物件につき、代執行を行う時期を同日時に指定した代執行令書を通知した(渋土公発第38号(乙第50号証、甲第8号証)、渋土公発第39号(乙第50号証、甲第7号証))(以下、これら代執行を行う時期の指定の公告及び代執行令書を総称して「本件代執行令書」という。)。

(20)平成22年9月24日午前10時、被告は不法占用物件の除却義務の行政代執行(以下「本件代執行」という。)に着手し、同日午後3時20分にこれを終了した。また、被告は本件代執行により除却した物件を特定の倉庫に保管するとともに、保管場所、返還方法その他の渋谷区立都市公園条例12条所定の事項を公告した(渋谷区公告第166号(乙第2号証))。

3原告らの主張に対する反論
(1)原告らは、被告による違法行為として、①地方自治法違反、②違法な自力救済、③弁明機会の付与欠如、④行政代執行法所定の要件非該当、⑤都市公園法27条3項違反、⑥団体のみへの戒告の違法、⑦裁量権の逸脱濫用など縷々主張するが、以下に述べるとおり、これら主張にはいずれも理由がない。

ア地方自治法違反に対する反論
原告らは、本件基本協定は地方自治法96条1項9号の「負担付きの寄附又は贈与」に相当するにもかかわらず議会の議決を経ていない、また、被告によるナイキジャパンの選定過程が不透明であり一般競争入札を原則とした同法234条2項の趣旨に反するといい、これらのことから宮下公園の整備計画が違法であり、本件代執行も当然にその違法性を承継すると主張する。

しかし、地方自治法96条1項9号の「負担付きの寄附又は贈与」とは、寄附又は贈与を受ける際に、反対給付的な意味において、地方公共団体の負担を伴う一定の条件が付され、その条件に基づく義務を履行しない場合は、当該寄附又は贈与が解除されるようなものをいうところ(乙第51号証)、本件基本協定書においては、ナイキジャパンから被告への公園施設の引渡しの際に、上記のような条件は付されていない(乙第18号証・8条3項参照)。

また、地方自治法234条1項の「契約」とは、同項に規定する「売買、貸借、請負」のほか、保管、運送等の契約をいうところ(乙第51号証)、本件基本協定書の内容を見れば明らかなとおり(乙第18号証)、本件基本協定はこれらの契約には該当しない。 しかも、ナイキジャパンの選定は、選定委員会の審査を経ているのであるし、同審査においては、施設の社会的貢献、経済的寄与、安定運営及びイメージ向上という各評価項目を総合的に評価した結果、他社よりも優れていると判断されたのであるから(乙第7号証及び同8号証)、選定過程が不透明であるなどということもない。

さらにいえば、仮に原告らのいうような地方自治法違反の存在を前提としたとしても、当該違反は手続的なものに過ぎないから、これをもって直ちに宮下公園の整備計画自体が違法となるということはできないし、そもそも地方自治法違反による違法が何ゆえ当然に本件代執行に承継されるのか、その理論的根拠は不可解であるといわざるを得ず、失当というほかない。いずれにしても、原告らの上記主張には理由がない。

イ違法な自力救済に対する反論
原告らは、平成22年9月15日の早朝に、被告が宮下公園で寝起きしていた者(原告●●)を強制的かつ暴力的に排除した行為は、違法な自力救済であると主張する。
しかし、強制的かつ暴力的な排除がなされたとの点は事実に反するし、しかも、同日に被告が行った行為は、公園管理者としての適正な管理権限の行使であり、違法ではない。

すなわち、公園管理者(被告ないし被告区長)は、渋谷区立都市公園条例に違反している者に対し、行為の中止ないし公園からの退去を命ずることができ(同条例11条1項)、また、同条例は、区長が指定した立入禁止区域に立ち入ること及び公園内において公園の管理に支障がある行為をすることを禁止している(同条例6条6号及び10号)。

しかるところ、平成22年9月15日は、宮下公園において仮囲いの設置が予定され、同日早朝、現にその作業が開始されたところであったが、その際、被告職員らは、公園内に私人(後に原告●●と判明)の存在を確認したので、作業を一時中断し、同人に対し、立入禁止区域であることを何度も説明し、退去を促したところ、同人はこれに応じることなく、公園内に居座る行為、すなわち、条例で禁止する「立入禁止区域に立ち入ること」及び「公園の管理に支障がある行為」をしたのである。そのため、被告職員らは同人に対し、同条例11条1項の行為の中止命令及び退去命令を発したものの、同人はこれにも従わなかったため、やむなく被告職員らは、これに付随する行為として、同人を公園外に移動させたのである。

これは、同日予定された仮囲い設置作業及び翌日から予定された樹木剪定作業の円滑な実施のみならず、同人の身体の安全確保という観点からも、緊急に必要なことであったのであり、さらに被告の行為は、極めて穏当な態様であったことからしても、これを強制的かつ暴力的な排除ないしは違法な自力救済ということはできず、同条例11条1項の命令に付随する行為であって、違法ではない。

さらにいえば、そもそも原告●●は、何ら正当な理由がないにもかかわらず、宮下公園を不法占拠し、しかも、被告職員らによる再三の退去勧告ないし退去命令に応じる素振りすらなかったので、やむを得ず、原告●●を移動させる結果となったのであるから、かかる行為は、正当防衛行為(民法(明治29年法律第89号)720条1項)というべきであって、違法性は阻却される。したがって、原告らの当該主張には理由がない。

ウ弁明機会の付与欠如に対する反論
原告らは、平成22年9月16日の本件除却命令に先立ち弁明の機会の付与は行われておらず、その後に続けてなされた本件代執行は手続的に違法であると主張する。
しかし、平成22年8月31日の公告(渋谷区公告第149号)において弁明の機会は付与されていた(乙第9号証)。したがって、原告らの上記主張には理由がない。

エ行政代執行法所定の要件非該当に対する反論
(ア) 2条所定の要件について
原告らは、本件代執行は、行政代執行法2条に掲げる要件(①「法律により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為」であること、②「義務者がこれを履行しない場合」であること、③「他の手段によってその履行を確保することが困難であ」ること、④「その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められる」こと)を満たしていないと主張する。

しかし、①上記ウで述べたとおり、弁明の機会は事前に与えられていたのであるから、除却命令が違法無効ということにはならない。また、②除却命令は都市公園法27条1項に基づき行ったものであり(乙第39号証、甲第1号証ないし同3号証)、これにより具体的な除却義務が発生するのであるから、代執行の前提となるべき義務は存在していた。

さらに、③本件除却命令発令前において、被告は不法占用物件につき繰り返し任意の除却を求めてきたのであるが、物件が除却されることはなかったという経緯からすると、本件除却命令によって原告らに課した不法占用物件の除却義務については、その任意の履行を期待することができない状況にあったといえることは明らかであるから、行政代執行を除いては、他に除却義務の履行を確保することは困難であった。

しかも、④除却対象物件は不法占用物件であるから、その除却義務の不履行を放置することが著しく公益に反するといえることは明らかである。

以上のとおり、本件代執行は、行政代執行法2条に掲げる要件をすべて満たしている。

(イ)3条所定の要件について
原告らは、平成22年9月18日の本件戒告において定められた履行期限がその3日後に指定されたことは、「相当の履行期限」(行政代執行法3条1項)が与えられていなかったと主張する。

しかし、「相当の履行期限」であるか否かの判断は、義務の内容、義務者の具体的事情などが考慮されるべきであるところ、本件戒告の対象となった義務の内容は、不法占用物件の除却義務であり、その除却については、本件除却命令を発する前から操り返しその任意の除却を促してきたにもかかわらず、何ら実現されていなかったのである。しかも、除却対象物件は、重機等の機器を用いなければ運ぶことができないような物はなく、これを直ちに公園外に移動させることは容易かつ可能であった。また、義務者の具体的事情については、原告らは、宮下公園を起居の場とし、設置した物件は生活の拠点であるといい、その被る不利益の重大性を強調するが、そもそもこれらはすべて不法占用物件であるし、加えて、被告は、平成22年8月31日の公告(渋谷区公告第149号(乙第9号証))によって、住居に困窮するなどの理由がある者を対象に、住居等の確保について相談に応じる旨を示し、現に被告においては相談に応じる体制が整っていたのである。

以上の事情を考慮すれば、たとえ宮下公園を起居の場とし、設置した物件が生活の拠点であるといっても、3日後の指定が履行期限として不相当となるものではない。

オ都市公園法27条3項違反に対する反論
原告らは、平成22年9月16日に行われた都市公園法27条3項の公告による除却命令(渋谷区公告第161号(乙第39号証、甲第1号証))は、その前日(同年9月15日)に被告が物件所有者(原告●●)を特定できたのは明らかであるとし、同項の要件を充たしていないと主張する。

しかし、除却命令を発した平成22年9月16日の正午の時点で、宮下公園内に不法に置かれている物件のうち、原告●●の名が付されたものはなかったのであるから、原告●●を名宛人とした除却命令を発することはできない。

したがって、平成22年9月16日の公告による除却命令が都市公園法27条3項違反とはならない。

カ 団体のみへの戒告の違法に対する反論
原告らは、原告のじれん及び原告守る会の構成員が所有する物件につき、団体のみに戒告を行った点に手続上の瑕疵があると主張する。
しかし、除却対象物件には、個人名と思しき氏名は付されておらず、一部、原告のじれんらの団体名が付されていた(乙第39号証の10枚目以下、甲第10号証)。そのため、被告は、すべての物件を所有者不明とはせずに、団体名が付された物件につき、当該団体名を、除却命令(平成22年9月16日)、戒告(同月18日)及び代執行令書(同月21日)の通知の名宛人としたものである。

以上のとおりであるから、名宛人を団体名とした戒告に、手続上の瑕疵があるということはできない。

キ裁量権の逸脱濫用に対する反論
原告らは、本件代執行は原告らの起居の場所を含めた生活の拠点を奪うものであり、これにより原告らが被る不利益は極めて重大であるにもかかわらず、被告が本件代執行を行ったことは、裁量権の逸脱又は濫用に該当するから、本件代執行は違法であると主張する。

しかし、以下に述べるとおり、被告には、裁量権の逸脱ないし濫用は微塵もない。
すなわち、宮下公園の整備について、被告は、平成22年4月からナイキジャパンが整備に着手することができるよう、平成21年9月から約半年もの期間をかけて同整備の着手のための準備を行ってきたのであり、平成22年3月15日にようやく準備が一段落し、その翌日(同月16日)に公園北側部分の閉鎖を試みたところ、原告のじれんに属する者等による妨害行為等があり、同年4月からの整備着手が頓挫してしまったのである。その後、被告は、上記のような妨害行為等による無用の混乱を避けるため、宮下公園内の状況につきしばらく様子を見ていたところ、同年6月21日には不法占用物件の一部から出火、焼損の事態が発生し、さらに同月25日には、こうした事態に不安を感じた地元から公園の整備を求める要望も出された。

以上の経緯に照らし、同年7月に入ってから、被告区長は、行政代執行手続をも視野に入れた臨時の組織を編制した。被告職員らは、警告札の掲示等により任意の除却を求めたが、除却されることはなく、無許可の夏まつりと称する集会・イベントの挙行という暴挙もあり、不法占用物件の放置という事態の改善は、一刻の猶予もない状況となった。

そこで、被告は、同月31日に除却勧告及び弁明機会の付与を行い、同年9月16日の本件除却命令、同月18日の本件戒告、同月21日の本件代執行令書を経て、同月24日の本件代執行に至ったのである。

このように被告は、本件代執行を行うまでの間、必要に応じ、必要な手続を段階的に進めてきたのであるし、また、不法占用物件の放置は、一般の公園利用を阻害するだけでなく、出火等の具体的危険をもはらんでおり、さらに、予定された公園整備も一向に進まないことから、かかる事態を速やかに解消する必要があったのである。

しかも、平成22年8月31日の公告(渋谷区公告第149号)において、被告は、住居に困窮するなどの理由がある者を対象に、住居等の確保について相談に応じる旨を示しており(乙第9号証)、住居に困窮する者に対する配慮も忘れていないのである。

したがって、本件代執行を行ったことにつき、被告には、裁量権の逸脱ないし濫用は微塵もない。

(2)以上のとおりであるから、原告らの上記主張にはいずれも理由がない。

4結語
よって、本件代執行は手続的にも実体的にも何ら違法はなく、また、原告らの主張にはいずれも理由がないから、原告らの請求は棄却されるべきである

別紙

被告準備書面1別紙
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