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渋谷区による三ヶ所同時野宿者排除に対する人権救済申立書

2013年3月21日に日本弁護士連合会に提出し人権救済申立書です。なお個人名は●●及びアルファベットに替えてあります。


人権救済申立書

                                                    2013(平成25)年3月21日

日本弁護士連合会会長 殿

                                        申立人ら代理人
                                                   弁護士   山  川  幸  生

                                                  司法書士  後  閑  一  博
                                                                  外6名

                                            当事者の表示  別紙当事者目録のとおり

第1 申立ての趣旨

1 相手方に対し、平成24年6月11日に相手方が設置・管理する渋谷区立美竹公園、渋谷区役所人工地盤下駐車場及び渋谷区役所前公衆便所を予告なしに一斉に封鎖した行為について、これを人権侵害行為と認めて、今後申立人らを含む渋谷区内において起居するホームレスの人及び同区内で炊き出し等の活動を行うホームレス支援団体に対し、同様の人権侵害行為が行わないように警告する

2 相手方に対し、渋谷区立美竹公園、渋谷区役所人工地盤下駐車場及び渋谷区役所前公衆便所をホームレスの人が夜間の寝泊まりの場所とすることができる状態にいったん戻した上で、上記公園及び施設を利用していたホームレスの人及びその支援者らと十分に話し合いを行い、生活保護法に従った居宅保護の開始をすすめるように警告する

3 相手方に対し、申立人聖公会野宿者支援活動・渋谷が毎週金曜日に行っている炊き出しのために渋谷区役所人工地盤下駐車場を使用することができる状態に戻し、炊き出しの実施について申立人聖公会野宿者支援活動・渋谷と十分に話し合いを行うように警告する
ことを求める。

第2 申立ての理由

1 事案の概要

 本件は、相手方が、2012(平成24)年6月11日の朝、ホームレスの人々が起居する場所となっていた東京都渋谷区渋谷1丁目18番29号所在の渋谷区立美竹公園(以下、「美竹公園」という。)、同区宇田川町1番1号所在の渋谷区役所人工地盤下駐車場(「渋谷区役所地下駐車場」または単に「地下駐」と通称される。以下、「駐車場」という。)及び渋谷区神南1丁目5番11号所在の区役所前公衆便所(以下、「公衆便所」という。)を予告なく封鎖して、人の立ち入りを制限した行為(以下、とまとめて「本件同時封鎖」という。)によって、ホームレスの人々が起居する場所を突然奪われ最低限の生きていくための基盤をも失ったこと、加えて美竹公園や駐車場でホームレスの人々を手厚く支援していたボランティア団体がその活動を著しく制限され、その結果ホームレスの人々がこれら支援団体による支援を十分に享受できなくなったこと等について、ホームレスの人々及び支援団体の人権を侵害するものとして、その救済を求める事案である。

2 当事者

(1) 申立人ら(個人)
本件の個人の申立人(以下「申立人ら(個人)」という。)は、いずれも、渋谷区及びその周辺で起居するホームレスの人である。

 申立人●●●●(以下、「申立人A」という。)は、東京都児童会館の敷地を寝場所としていたが、2011(平成23)年11月、同児童会館の工事を名目とする封鎖によって、寝場所を奪われ、美竹公園にテントを張って居住していた。しかし、2012(平成24)年6月11日に相手方によって美竹公園を封鎖され、寝場所を奪われ、更には、相手方によって2012(平成24)年7月30日に美竹公園内のテント等に対する行政代執行が行われた結果、テントを撤去され、多数の生活用品等を失った。また、同日の行政代執行が申立人渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合(以下、「申立人のじれん」という。)に対しても行われたことにより、申立人のじれんが毎週土曜日に美竹公園で行っていた炊き出し等の支援活動を2012(平成24)年12月まで受けることができなくなった。

 申立人●●●(以下、「申立人B」という。)は、本件同時封鎖当時、夜間、駐車場で寝起きしていた者であるが、本件の駐車場の封鎖によって、寝場所を奪われた。また、駐車場の封鎖に伴い、申立人聖公会野宿者支援活動・渋谷(以下、「申立人聖公会」という。)が毎週金曜日に駐車場で行っていた炊き出し等の支援活動を十分に受けることができなくなった。

 申立人●●●(以下、「申立人C」という。)は、2011(平成23)年9月から、駐車場などを転々として起居していたが、平成23年6月11日朝に相手方によって駐車場を封鎖されて、以後駐車場での寝起きする機会を奪われた。また、駐車場の封鎖に伴い、申立人聖公会が毎週金曜日に駐車場で行っていた炊き出し等の支援活動を十分に受けることができなくなった。

 申立人●●●(以下、「申立人D」という。)は、渋谷区とその周辺で起居している野宿者である。駐車場の封鎖に伴い、申立人聖公会が毎週金曜日に駐車場で行っていた炊き出し等の支援活動を十分に受けることができなくなった。

 申立人●●●●(以下、「申立人E」という。)は、2009(平成21)年ころから2011(平成23)年ころまで駐車場に夜間起居していたが、その後、申立人聖公会の支援により相手方において生活保護を受給し、本件同時封鎖当時から現在に至るまで申立人聖公会の活動を手伝っているが、本件同時封鎖によって駐車場での仲間の支援活動が十分にできなくなる影響を受けた。

(2) 申立人のじれん(渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合)

1998(平成10)年4月に結成された野宿者支援団体(権利能力なき社団)。「渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合」が正式名称で、略称は「のじれん」である。渋谷を中心に毎週土曜日の共同炊事(炊き出し)や夜間巡回、医療相談などの活動に取り組んでいる。美竹公園内に簡易倉庫を建て、共同炊事に使用する物資等を保管していたが、2012(平成24)年7月30日に美竹公園内のテント等に対する行政代執行が行われて、保管していた鍋釜等の物資等を強制撤去された。2012(平成24)年12月からは資材を新しく購入する等して再び美竹公園で毎週土曜日の共同炊事を行っている。

(3) 申立人聖公会野宿者支援活動・渋谷

 渋谷区において活動するホームレスの人々を支援するボランティア団体(権利能力なき社団)。キリスト教団体である日本聖公会の信徒によって運営されている。2004(平成16)年12月から2012(平成24)年6月8日まで、駐車場内で、炊き出しの配食やコーヒー等の飲料の提供を行ってきたが、2012(平成24)年6月11日朝に駐車場が封鎖されて以来、駐車場内での炊き出しを行うことができなくなり、現在は駐車場前での配食を行っている。

(4) 相手方

 相手方は、東京都の特別区であり、区長を首長とする特別地方公共団体である。相手方は、今回のホームレス排除の舞台となった渋谷区立美竹公園、駐車場及び渋谷区役所前公衆便所の管理者である。相手方の区長は、生活保護法19条1項に基づき、渋谷区福祉事務所の所管区域である同区内に居住地を有する要保護者及び居住地がないか又は明らかでないよう保護者であって同福祉事務所の所管区域内に現在地を有する者の保護を決定し、かつ実施する責任を負う。

3 封鎖前の美竹公園の状況

 (1) 美竹公園には、2012(平成24)年6月11日当時、10数軒のテント・小屋があり、ホームレスの人が寝泊まりの場所としていた。この中には、申立人Aのように、2011(平成23)年11月の東京都児童会館の工事を名目とする封鎖によって、寝場所を奪われ、美竹公園に身を寄せている野宿者もいた。

 (2) 美竹公園では、毎週土曜日、過去14年間にわたって申立人のじれんが共同炊事(炊き出し)を行い、ホームレスの人の支援を行っていた。以上の事実は相手方も承知しており、ホームレスの人の居住や申立人のじれんの共同炊事(炊き出し)も事実上黙認してきた。

4 封鎖前の駐車場の状況

(1) 駐車場は、長い間、ホームレスの人々が寝泊まりの場所としていていた。ホームレスの人々は、夜間にのみ入場し、早朝になると、段ボールを片付けて荷物を持って引き揚げるという暗黙のルールを守っており、一定の集団的秩序をもった寝泊まりの場所となっていた。本件同時封鎖前、ホームレスの人々が駐車場に居たのは、深夜から早朝にかけての時間帯に限られ、日中は迷惑をかけないようにホームレスの人々全員が駐車場をいったん立ち去っていた。
 駐車場は、ホームレスの人々のうち、テントを持たない者にとって、雨露をしのげる貴重な寝場所であり、生きていくための最低限の基盤であった。
 2012(平成24)年6月11日の本件同時封鎖の直前には、申立人Bを含む約30名のホームレスの人々が駐車場で寝泊まりをしていた。

(2) また、申立人聖公会は、8年ほど前から、毎週金曜日に駐車場で炊き出し等の支援活動を行っていた。そこには、毎週200人前後のホームレスの人々が集まって、申立人聖公会のボランティアから配食やコーヒー等の配布を受け、一時の飢えをしのいでいた。この際、申立人聖公会は、ホームレスの人々の生活に関する相談も受けていた。申立人Bのほか、申立人D、申立人Cらが、申立人聖公会の上記支援活動に集まっていた。また、申立人Eは、上記支援活動の手助けをして、かつてのホームレス仲間の手助けをしていた。
 こうした事実を相手方は知っており、相手方は、これまで、申立人聖公会を交えた当事者との交渉の中で、ホームレスの人々の夜間の駐車場の使用を強制的に排除することはせず、事実上一時使用を黙認してきた。

5 美竹公園の封鎖並びにホームレス及び支援団体の排除

  (1) 相手方は、2012(平成24)年6月11日の早朝午前6時半ころ、申立人Aら美竹公園に寝泊まりするホームレスの人々や申立人のじれんに事前に告知することなく、突如として美竹公園をフェンスで封鎖し、多数の警察官によって包囲し、ガードマンらを用いて美竹公園への出入りを制限した。
なお、文書ビラによる告知があったのは、封鎖4日後の6月15日である。相手方は、災害時の一時集合場所の整備を封鎖の理由に挙げた。

 そして、申立人Aら美竹公園に寝泊まりするホームレスの人々に対し、出入りは認めながらも、美竹公園入口前に、申立人Aら美竹公園に寝泊まりするホームレスの1人ひとりの顔写真を張り、その出入りをチェックし、荷物について質問する等し、1週間以内に所持品を持って公園から退去するよう促した。

 さらに、相手方の区長は、2012(平成24)年6月20日、相手方の庁舎の掲示場において、不利益処分の名宛人となるべき者を「氏名不詳」等とし、対象となる物件の大部分を個別に明示しないまま、都市公園法に基づいて美竹公園内の物件の除却命令の前提となる弁明の機会の付与の手続きを行う旨の告示をした。

 除却命令の名宛人となるべき申立人Aらは美竹公園内に起居していたのであるから、その所在は判明していた。にもかかわらず、相手方は、行政手続法15条1項の通知を相手方の区役所の掲示場に掲示する方法により行い、通知書を美竹公園内のホームレスの人々に直接手渡さなかったのである。そして、相手方は、申立人のじれん及び申立人聖公会等のホームレス支援団体から批判を受け、ようやく、2012(平成24)年6月29日付けで公園内のホームレスの人々に通知書を交付し、申立人のじれんの事務所に対して郵送で交付するに至った。相手方には、適正な手続を真摯に履践する姿勢に乏しかった。

 その後、相手方は、2012(平成24)年7月30日、申立人Aらホームレスの人々のテント・小屋・荷物等及び申立人のじれんの荷物等を置いた倉庫を美竹公園から撤去するための行政代執行を行い、撤去を強行した。

(2) また、上記の美竹公園封鎖によって、申立人のじれんは、2012(平成24)年12月まで、毎週土曜日の共同炊事(炊き出し)を美竹公園内で行うことができなくなり、これにより、美竹公園に住んでいた者だけでなく、申立人ら(個人)を含む多くのホームレスの人々及び生活困窮者が配食を受けることに支障をきたした。

 なお、相手方は、本件の美竹公園の封鎖後も、申立人のじれんに対し、駐車場に代わって支援活動を行うことのできる場所の提供など、支援活動を継続できるような措置やそのための協議等も行わなかった(なお、2012(平成24)年12月以降の美竹公園での申立人のじれんの支援活動は、相手方との協議などを経ることなく、事実上再開したものである。)。

6 相手方役所地下駐車場の封鎖並びにホームレス及び支援団体の排除

(1) 相手方は、2012(平成24)年6月11日早朝、ホームレスの人々が上記ルールに従って駐車場を退出した後、申立人Bらホームレスの人々や申立人聖公会に対して何の事前の告知もなく、工事を名目に駐車場を封鎖し、申立人Bら昼夜を通じて人が出入りできないようになった。

 このため、申立人Bら駐車場を寝泊まりの場所としていたホームレスの人々は、その日から突然寝場所を失い、寝場所を求めて路上や代々木公園などをあてもなく彷徨うことになった。

(2) また、上記の駐車場封鎖によって、申立人聖公会は、毎週金曜日の炊き出し等の支援活動を駐車場内で行うことができなくなった。これにより、申立人聖公会は、駐車場前で配食のみを行うほかなくなり、コーヒーなどの飲料の配布を取りやめざるをえなくなり、相談活動も十分にできなくなる(路上の立ち話では十分な相談活動はできないことは明らかである。)など、規模の縮小を余儀なくされた。このため、申立人ら(個人)をはじめとする多くのホームレスの人々及び生活困窮者が十分に申立人聖公会の支援を受けられなくなった。

 なお、相手方は、本件の駐車場の封鎖後も、申立人聖公会に対し、駐車場に代わって支援活動を行うことのできる場所の提供など、支援活動を継続できるような措置やそのための協議等も一切行っていない。

7 区役所前公衆便所の封鎖及びホームレス排除

(1) 公衆便所でも、数人のホームレスの人々が寝場所にしていた。
(2) 平成24年6月11日早朝、改修工事を名目に便所は封鎖され、ホームレスの人々は追い出された。

8 相手方の行為の違憲性・違法性

 相手方による本件同時封鎖は、ホームレスの人々を美竹公園や駐車場等から強制的に立ち退かせることを目的としたもので、下記のとおり申立人らの権利を侵害する違憲・違法な行為であり、これらの行為の中止及び原状の回復が必要である。

(1) 目的の不法性

 相手方による本件同時封鎖は、突然予告なしにホームレスの人々が起居する3つの場所を同時に封鎖したことや、相手方の主張する各公園・施設の閉鎖の目的(美竹公園の閉鎖における「災害時の一時集合場所の整備の工事」、駐車場の閉鎖における「地上の工事の機材の置き場として使用する」)には緊急性や3か所同時に工事等を実施すべき相互関連性が乏しいこと、駐車場に至っては地上の工事が終了した後も閉鎖が続いていること等に鑑みれば、単に美竹公園・駐車場等の工事等のために行われたものとは言いがたい。美竹公園や駐車場がホームレスの人々の起居の場として渋谷区及びその周辺のホームレスの人々の間で有名であったことを考えると、その真の目的は、美竹公園や駐車場等に起居するームレスの人々を一掃しようとしたこと、すなわちホームレス排除自体が本件同時封鎖の目的であったといわざるをえない。

 また、本件同時排除では、ホームレスの人々だけでなく、その支援団体も同時に各公園・施設から排除された。支援団体である申立人聖公会及び申立人のじれんのボラランティアたちは、住むところもお金もない極貧のホームレスの人々に対し人が生きていくための最低限の支援を長年行ってきた。本件同時排除は、こうした生活困窮者支援活動を無にした。ここにみられるのは、ボランティアを排除することによってホームレスの人々の「生きる手段」(これは、生活の手段ではなく、生命・身体を維持する手段である。)を奪うという構造である。その行為は、ホームレスの生存権にとどまらず、生きる権利を侵害するばかりでなく、行政の生活困窮者対策の不足を補って真摯に活動しているボランティアに牙をむけたという点で著しく相当性を欠く行為である。

 本件では、事前の予告がない「抜き打ち」の閉鎖であったこともあいまって、相手方の目的及び手段の不法性は著しい。

(2) 憲法25条違反、生活保護法違反

 申立人ら(個人)をはじめとする美竹公園・駐車場・公衆便所に起居するホームレスの人々は、その必死の努力により公園にテント等を建てたり、駐車場等の暗黙のルールを守って段ボールで寝床を使ったりするなどして、寝泊まりしていた。

 そして美竹公園や駐車場では、それぞれ週に1度、支援団体による炊き出しが行われ、飢えをしのぐことができた。

 これは、憲法25条1項の保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の水準に満たないものであったとはいえ、申立人ら(個人)が命をつなぐための超最低限の生活をする基盤を築いていたものというべきである。本件同時封鎖は、公権力の行使によって上記のような申立人ら(個人)の命綱ともいうべき生活基盤を根こそぎ奪うものであった。申立人ら(個人)は、単に雨露をしのぐ起居の場を失うだけでなく、わずかに食いつないでいくための支援団体の炊き出しも排除され、その恩恵を十分享受することが困難になったのである。

 そして、公権力が、ある特定の者の生活基盤を根こそぎ奪う行為を行う場合には、その当事者らが生存権(憲法25条)で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できるよう、代替手段を提供すべきである。そして、上記の代替手段として提供される「健康で文化的な最低限度の生活」の水準は、憲法25条の生存権の具体化である生活保護法により実際に保障される生活水準でなければならない。

 しかし、相手方は、上記の水準を満たす代替策(具体的には生活保護)を当事者らに具体的に提示・誘導することなく、突如として、本件同時封鎖に踏み切り、寝起きの場所を奪った。相手方の生活保護を実施するセクションである渋谷区生活福祉課は、本件同時封鎖を事前に知らされておらず、支援団体の通告によって初めて本件同時封鎖を知って、大いにあわてるという有様であった。このことからも、相手方が代替策の提示を全く考えていなかったことは明らかである。

 したがって、本件同時封鎖は、申立人ら(個人)その他のホームレスの人々の生存権を侵害するものとして、生活保護法さらには憲法25条1項にも違反する。

(3) 憲法13条、22条1項違反

 本件同時封鎖は、困窮等様々な事情により他に居住する場所を有しなかった申立人ら(個人)その他のホームレスの人々が寝起し、炊き出し等の支援を受けていた場所から、彼らを一方的、強制的に排除しようとするものである。

 そして、美竹公園・駐車場・公衆便所は、ただ単に寝起きする場所というだけでなく、ここを拠点にして申立人ら(個人)は生業に就き、社会に貢献し、コミュニティを形成していました。つまり、美竹公園・駐車場・公衆便所は申立人ら(個人)の人格的生存の基盤だった。

 また、起居の場と炊き出しは、ホームレスの人々によって、生きるための最低限の基盤であり、これを奪うことは生命・身体に重大な危険を生じさせる可能性もある重大な行為である。

 このような人格的生存の基盤を奪うことは、重大な人権侵害につながるので、十分な代替策を提示して、人格的生存の基盤を確保できるように誘導することが必要である。

 しかしながら、(2)で述べたとおり、相手方は、十分な代替策への提示・誘導を行うことなく、突然、本件同時封鎖を行い、ホームレスの人々の生依存を脅かした。

 したがって、本件同時封鎖は、憲法22条1項が保障する申立人ら(個人)その他のホームレスの人々の居住・移動の自由及び憲法13条が保障する幸福追求権を侵害するものとして違憲、違法の行為である。

(4) ホームレス自立支援法11条違反及び社会権規約11条1項違反

2002(平成14)年8月に成立したホームレスの自立の支援等に関する特別措置法11条は、公共施設の管理者は、「当該施設をホームレスが起居の場所とすることにより適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする」と定めている。

そして、同法制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、上記11条の「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」としている。

 ここにいう「国際約束」とは、国際人権規約の社会権規約11条1項が保障する居住の権利及びこれから派生する強制立ち退きの禁止を意味している。

社会権規約11条1項は「適切な居住の権利」を保障しており、その内容として、①当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)と、②適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)なく強制的に立ち退かされないことを権利として保障しているもの(占有の法的保障、強制立ち退きの禁止)と解されている(社会権規約に関する「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の一般的意見第7、1997年)。

 したがって、相手方が行った申立人ら(個人)の締め出しは、そこに起居するホームレスの人々を強制的に排除するものであったから、その前提として、支援団体を含む申立人らと十分に話し合いを行い、敷金支給によって居宅を確保した上での居宅保護の開始(生活保護法30条1項、2003(平成15)年7月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」、同日付厚生労働省社会・援護局長通知「『生活保護法による保護の実施要領について』の一部改正について」)をはじめとする適切な代替措置を講じなければならなかった。

 本件の場合、相手方は、生活保護の担当部署である生活福祉課などを通じて、申立人らと話合いをするチャネルもあり、美竹公園・駐車場・公衆便所で寝起きすること等を長期間黙認してきたという経緯もあるだから、立ち退きを求める前に、申立人らとの間で事前に真摯な協議をして、生活保護法等による代替措置に誘導するべきであった。

 しかし、相手方は、申立人らに対し、十分な話し合いも適切な代替措置も講じることなく、本件同時封鎖を行った。

 したがって、本件同時封鎖は、ホームレス自立支援法11条及び社会権規約11条1項に違反し、違法であることは明らかである。

(5) 自由権規約17条違反

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)17条は、住居につき恣意的又は不法に干渉されない旨規定している。自由権規約委員会が採択した一般的意見によれば、ここにいう「住居」とは、人の住んでいる場所又は日常の職業を行っている場所を示すと解されており、除却命令の対象となるものと思われるテント等はこの「住居」に該当する。駐車場・公衆便所も毎晩寝起きの場所に使われていたのですから、やはり「住居」に該当する。

 申立人ら(個人)その他のホームレスの人々の居住権の保護を無視して行われた本件同時封鎖及び除却命令の発令へ向けた準備は、申立人ら(個人)その他のホームレスの人々の「住居」に対する「不法な干渉又は攻撃」ですから、自由権規約17条に違反し、違法である。

(6) 都市公園法違反及び行政代執行法違反

 相手方が美竹公園において発令した除却命令に基づく強制代執行(2012(平成24)年7月30日執行のもの。)は申立人らのテント等の除去を目的としていた。しかし、その真の目的はテント等の除去ではなく、公園の敷地の明渡し、すなわち「与える債務」の強制的実現であり、「為す債務」のそれではない。

 したがって、相手方が上記の目的(公園の明渡し)を実現するためには、民事訴訟(またはそれを前提とした民事保全)に基づく直接強制によらなければならない。直接強制が可能である以上、公園内の本件テント等の撤去という明渡しの一部分のみを取り上げて行政代執行という手法によって公園の明渡しという目的を実現することは許されない。

 都市公園法6条も、「占有」ではなく、わざわざ「占用」との文言を用いている。人の「占有」は同法6条の問題ではない。人の「占有」を排除するために、同法6条違反に対処するための都市公園法上の措置(具体的には除却命令)を講ずることはできない。したがって、公園のホームレスの人々を排除する目的のために、都市公園法27条1項1号に基づく除却命令を発することは許されない。

 そして、かかる除却命令に基づいてなされた美竹公園の行政代執行は、適法な要件を欠くものとして違法である(行政代執行法違反)。

 以上のとおり、本件同時封鎖に引き続いて行われた美竹公園における都市公園法27条1項1号に基づく除却命令及びこれを強制するための行政代執行は、違法である。

 なお、ホームレスの強制退去の方法に関し、国際連合の「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」(以下、「社会権規約委員会」という。)は、日本政府報告に対する最終見解(2001(平成13)年9月24日)において、「30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き(中略)に懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。」との懸念を表明した。ここで社会権規約委員会が問題にした「仮の立ち退き命令」は行政代執行手続を指すことは明らかであった。しかし、これに対し、政府は、2009(平成21)年12月の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告(パラグラフ57)」において、「民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。」として民事保全法の仮処分手続が社会権規約委員会の一般的意見に反しないことについて長文で述べた末、「最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含
む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。」と説明した。したがって、日本政府の上記対外的見解も、明らかに、ホームレス(人間)を排除する場合には民事保全法の仮処分ひいては民事執行法による本執行の手続きを必要とすることを当然の前提にしているのというべきである。

9 第三者の憲法上の権利の援用

 本件同時封鎖は、申立人のじれん、申立人聖公会及び申立人Eの活動を制限するものである。

 これらの活動は、申立人ら(個人)をはじめとする、炊き出し等の支援活動に集うホームレスの人々や生活困窮者が生きていくための最低限度の命綱であった。そして、本件同時封鎖によって、申立人のじれん、申立人聖公会及び申立人Eが支援活動を十分に継続できなくなったことにより、申立人ら(個人)その他の多くのホームレスの人々及び生活困窮者は生きていく糧を得る手段を失う羽目になった。

 こうした相手方の行為は、8(2)(3)で述べたのと同様に、申立人ら(個人)その他の多くのホームレスの人々及び生活困窮者の生存権(憲法25条)や、居住の権利(憲法22条1項)及び生命・身体・人格的実存を維持するための幸福追求権(憲法13条)を侵害する行為である。

 そして、申立人のじれん及び申立人聖公会(これを申立人Eは手伝っている。)が行う炊き出し等の支援活動に集うホームレスの人々や生活困窮者は、住所もない無名の人々である。したがって、申立人のじれん、申立人聖公会及び申立人Eが、支援活動に集うホームレスの人々や生活困窮者らの憲法上の権利に対する侵害に基づく違憲、違法を主張することは適切な状況にあり、彼らに実質的な不利益を生じさせないので、彼らの憲法上の権利(憲法13条、22条1項、25条)に対する侵害を援用することができる。

 したがって、相手方が、本件同時封鎖によって、申立人のじれん及び申立人聖公会(これを手伝っていた申立人Eを含む。)の活動を著しく制限したことは、憲法13条、22条1項、25条に違反するものとして、違憲、違法な行為である。

10 以上の通り、相手方が行った本件同時封鎖及びホームレスの排除は、憲法13条、22条1項、25条に違反するとともに、上記の法律及び国際人権規約に反する違法な行為であって、申立人らに対する重大な人権侵害行為である。

 よって、申立人らは、相手方に対し、上記の人権侵害行為を救済するため、これをいったん封鎖前の原状に回復して、野宿者の寝泊まり及び支援者の支援が可能な状態に戻すとともに、申立人らと十分に話し合いを行い、生活保護法3に従った居宅保護の開始をすすめるよう求め、本件人権救済申立てに至った。
                                                                  以上
                                      
                                        
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Author:よもやま話編集委員会
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